スマホゲーム「ポケモンGO」のヒットをはじめとして浸透し始めているAR(拡張現実)技術。AR技術はエンターテインメントを中心に普及が進んでいますが、ニーズの高まりやデバイスの進化により、製造業にも次々と導入され課題を解決しています。今回は製造業でのAR活用について、活用が進む理由から活用方法とメリット、そして活用事例までご紹介します。
製造業でAR活用が進む理由
現在製造業でAR活用が進んでいる理由から説明したいと思います。
ニーズの高まり
日本の製造業を支えていた熟練技術者が年々減少し若手に技術を継承する流れが失われている一方で、現場では定期的にスキルアップが求められるため、人手不足が深刻化しています。その上、製品のサービスのメンテナンスも複雑化しています。そこで、解決策としてAR活用に対するニーズが高まっています。
デバイスの進化
しかし、性能面・費用面で、現場での使用に耐えるARグラスなどのデバイスはありませんでした。その中で近年デバイスが市場のニーズを満たすレベルまで進化してきたため、AR活用が現在進んでいます。
製造業でのARの活用方法
では、製造業でのARの活用方法はどのようなものがあるのでしょうか。
製造現場における作業の指示・支援
分厚いマニュアルや作業資料を参照しなければいけない製造現場では技術者は手をふさがれてしまい、負担がかかります。そこで、ARを活用しスマートグラスに作業工程や、遠隔地からの作業指示を表示することで両手に作業に臨み、生産性を上げることができます。また、不明な時も視界を共有しながら解決することもでき、現場のミスを減らすことも期待できます。
保守メンテナンス作業の指示・支援
保守メンテナンス作業も同様に、手順書を参照しながら作業することになります。メンテナンス対象の機械設備の上にARで点検方法や点検項目など必要な情報を投影することで素早く情報にアクセスすることができ、手順書を参照する手間も省き作業効率を上げることができます。
デジタルツイン
デジタルツインとは、現実にある製品をコピーしてバーチャル空間に再現したもの、まさしく「電子空間の双子」です。ARのほかVRやIoT、AI技術を用いることでデジタルツインを実現することができます。デジタルツインを使うことで、時間やコストのかかる製品の開発・試作・改善をバーチャル空間で素早く行うことができます。また、製品に何か問題が起きた際に、バーチャルな複製であるデジタルツインを参照することで迅速に問題点を発見し改善することができるため、トラブルシューティングやアフターサービスにも役立てられます。
研修・トレーニング
技術者を現場に投入するにあたって、技能教育や安全教育が必要とされます。技術者がこうしたトレーニングを積み熟練するには、通常長い時間がかかります。ここでARを導入することで、トレーニングの効率を向上させ、研修期間を短縮することも期待できます。ARにより遠隔地からの指導が可能になるため、指導者と受講者が同じ場所にいなくても研修を実施することができるようになります。その上、ARグラスを通して作業内容や作業指示を視覚的に捉え、正確に理解することができるようになり効率的にスキルを磨けます。こうしたARを用いたトレーニングは言葉の壁がある外国人労働者にとっても助けになるでしょう。
製造業でARを活用するメリット
ARを活用したところで、得られるメリットについて見ていきたいと思います。
作業の効率化
ARグラスで情報を投影することで、作業者はハンズフリーで作業を進めることができるようになります。その上、情報の投影や視界を共有しての遠隔地からのサポートにより、経験が浅い技術者でも難しい作業を行うことが可能になるため人手不足にも対応し、業務の効率化が見込めます。
特に、対面で集まることが難しくなっている新型コロナウイルス流行下では、遠隔サポートによりかえって作業効率を向上できることはAR活用の大きなメリットであると言うことができます。
コスト削減
AR活用により遠隔地からも視界を共有して問題解決をすることができるため、移動コストやミーティングコストなど様々なコストを削減することができます。
また、デジタルツインを活用する場合は開発・試作・改善をバーチャルで効率的に行うことができるため、さらなるコストカットが期待できます。
製造業×AR 国内事例
国内での製造業のAR活用事例をご紹介します。
東芝デジタルソリューションズ
東芝デジタルソリューションズは、現場作業のデジタル化ソリューション「Meister AR Suite」の提供を2018年から始めました。「Meister AR Suite」では、タブレットを設備に向けると作業箇所や作業手順がARで示され、音声・映像で案内が始まります。ARのガイドにより、現場で課題となっている業務効率化や技術継承を支援する製品になっています。
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製造業×AR 海外事例3選
国内事例を見たところで、次は海外事例を紹介します。
BAE Systems
イギリスの国営航空宇宙関連企業であるBAE Systemsは、技術者のトレーニングにマイクロソフトのARグラスHololensを導入しました。ARグラスに表示される作業ガイドと3Dモデルにより、技術者はより実際の作業に近い形で訓練を受けることができるようになり、作業効率は上がり、新人の技術者のトレーニングは30~40%ほど効率が向上しました。
キャノンデール
自転車の修理においては、持ち込まれる自転車がどの製品なのか、どのように製造されたのか、どの部品が必要なのかといった専門知識が必要となります。その一方で、販売店はメーカーから独立したものが多く、全ての販売店が全てのメーカーに精通しているわけではなく、店によってその知識にギャップがあります。米国発の人気自転車メーカーであるキャノンデールは、そのギャップがユーザーの満足度を下げかねないと考え、解決策として、必要な製品情報を店舗や消費者に届けるARサービスを導入しました。
このようなAR活用により、販売店はマニュアルや発注書を読む手間を省き、必要な情報に辿り着くことができるようになりました。修理が必要な自転車をスキャンすることで交換部品を見つけられるようになったため、作業時間が短縮され、自転車をユーザーにより早く届けられるようになりました。
また、このARサービスは、客が来店した際に店員が自転車をスキャンして情報を得ることで客により製品の良さをアピールできるようになるという点でマーケティングにも活用できます。
シーメンス
ドイツの機械メーカー・シーメンスは製品を作る際に、デジタル空間で設計しシミュレーションを行うデジタルツインのソリューションを提供しています。シーメンスはデジタルツイン導入により、高コストな物理試作回数を減らすことをはじめとして、構想・設計から組み立て・販売に至るまでのプロセスを加速し、品質と効率を向上できると謳っています。
技術の進歩により実用化されてきたデジタルツインは今後さらに普及すると考えられます。
プレティア・テクノロジーズの製造業支援サービス
本WEBメディア「AR TIMES」の運営元であるプレティア・テクノロジーズ株式会社は、「ARクラウド」をはじめとしたアルゴリズム開発、および「AR謎解きゲーム」をはじめとした各種エンターテイメント及びソリューションを提供するスタートアップ企業です。
弊社は製造業の領域においても、タブレットを通して現場への遠隔サポートを行うことができるサービスを開発しており、製造業へのAR活用に関し知見と経験を有しております。
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