AR(=拡張現実)は、現在急速に普及し幅広い分野で活用されています。アパレル業界におけるARの活用目的としては、仮想試着によるミスマッチの削減やオンラインショッピングでの購買率の向上、目新しい経験によるPR効果などさまざま。本記事では、アパレル業界においてARが具体的にどのように活用されているのかをご紹介します。
ARとは?
AR(=拡張現実)とは、実在している場所やモノにヴァーチャルな映像を重ねて表示する技術のこと。スマートフォンやタブレットなどの機器を通して自分が見ている現実世界のフィールドに本来は存在しない情報を示します。現在はゲームなどのエンタメコンテンツをはじめ、インテリアや観光など幅広く応用されています。
アパレル業界におけるARの効果
アパレル業界がARを導入することにより、大きく3つの効果が期待されます。
仮想試着による購買率改善、ミスマッチの削減
コロナ禍でオンラインショッピングの利用が増えた今、店舗内で試着をすることが難しい状況にあります。しかしARを導入しさまざまな方法で仮想試着を可能にすることで、ミスマッチの削減や購買率の改善が期待されています。
AR装飾による目新しいブランド表現
店舗にARを導入した目新しいディスプレイを設けることで、店舗での来客者数の向上、またショップユーザーに今までにはなかった新しい体験を提供することが可能になりました。
SNSでの認知向上
SNSでの広告効果が高いことから、Instagramなどのアプリを通して誰でも気軽にARの体験を可能にすることで、ブランドの宣伝効率を上げられることが期待されています。また簡単にAR体験ができることから、ユーザーにとってもショッピングがさらに楽しくなるような新たな体験が可能になりました。
店舗におけるARの活用方法
「calif」
「XLARGE」や「X-girl」をはじめ、「MILKFED」、「SILAS」などのストリートカルチャーを発信しているオフィシャルオンラインストア「calif」が、2019年11月にリニューアルオープンした渋谷PARCO 5Fに「calif SHIBUYA」として初出店しました。
店舗では3Dバーチャルフィッティングサイネージ「FXMIRROR」を採用し、実際に試着をしなくても着用イメージをモニター内で確認することができる仕様となっています。
ZARA
ファッション業界大手のZARAが2018年4月に拡張現実アプリ「ZARA AR」を発表しました。一部店舗内に置かれたボックスのほか、店舗のウィンドウに設置されたロゴ「SHOP THE LOOK」にスマホ画面をかざすと、QRコードとなったロゴがアプリを認識し、新作コレクションを着たモデルが映し出されるようになっています。
ファッションモデルがバーチャルで動くという大胆なディスプレイにより、顧客エンゲージメントを高め、入店者数の向上に成功しています。
ECサイト、アプリにおけるARの活用方
HATORA
ユニセックスウェアレーベル「HATORA」が2020年3月下旬、VR Labが提供しているスマートフォン向けARアプリ「STYLY Mobile」と共同でアイテムをARで体験できるコンテンツを公開しました。
ARコンテンツはHATORA STORE内のアイテム紹介ページからSTYLY Mobileアプリをインストール後、AR Viewボタンをタップすることで体験が可能です。
chiquelle
スウェーデン発のアパレルEC「chiquelle」が2019年9月、ARショッピングアプリ「Chiquelle Style AR」をリリースしました。自分をモデルとしたアバターにchiquelleが販売するファッションアイテムをカスタマイズすることで仮想試着を実現しました。まず自分の外見やサイズ、身長、体形をアバターで作成し、ARモードにてスタイルをプレビューすることができます。このアプリはすでにスウェーデンで大成功を収めており、配信当初からダウンロード数No.1を記録しています。
Chiquelle Style AR:https://apps.apple.com/jp/app/chiquelle-style-ar/id1476058103
Wanna Kicks
ベラルーシの「Wannaby」は、より自分にぴったりのスニーカーを見つけることを目的としたスニーカー試着アプリ「Wanna Kicks」の配信を開始しました。
3Dモデルのリストからスニーカーを選び、自分の足にカメラを向けるとまるでスニーカーを実際に試着しているように見えます。ECサイト特有のミスマッチ削減により返品率を下げられることが期待されています。
Wanna Kicks:https://apps.apple.com/jp/app/wanna-kicks/id1444049305
GUCCI
有名ブランド「GUCCI」が2019年6月、AR技術を用いた試着コンテンツを公式アプリに導入しました。スニーカーをはじめ、時計(Watches Try On)、絵画などのインテリア、マスク、リップスティック、ハットなど様々な商品を対象にARによる試着が可能となっています。
GUCCI:https://apps.apple.com/jp/app/gucci/id334876990
KARITOKE
月額制でブランド腕時計をレンタルできるサービス「KARITOKE」が2020年3月、腕時計を“視“着できるサービス「KARITOKE AR」の提供を開始しました。サイトから時計を選んで“視“着すると、原寸大の時計が映し出され、サイズの感の確認はもちろん、自分のコーディネートとの相性もチェックすることができます。
アパレル業界においてSNSでの広告効果が高いことから、今後のオンラインショッピング体験の基盤になるとしてAR機能を拡充する考えが広まっています。オンラインショップで商品を購入する前にARによるバーチャル試着を簡単にショップ機能で提供できるようにすることを目標とし、現在インスタグラムではランコムやアルマーニなど330のビューティーブランドがバーチャル試着を提供しています。
「Dior」は2019年春夏コレクションの際、Instagramでサングラスやヘッドバンドをバーチャルに試着できるサービスを発信しました。Diorのフォロワーであればフィルター上でタップするだけで簡単に仮想試着をし、大きさや雰囲気を体感できるコンテンツを発信しました。
まとめ
現在もアパレル業界では急速にARの導入が進んでおり、コロナ禍でオンラインショッピングが多用されるようになった今、ARでの仮想試着が新たなニーズとなっています。また、今までになかった非現実的な体験が可能になり、アイテムを選ぶことがさらに楽しくなりましたね。アパレル業界でのAR技術でどんな体験ができるのか、これからも目が離せません!